虹は私たちの間に 性と生の正義に向けて
山口里子 著
新教出版社
ISBN978-4-400-42706-3
聖書の中のセクシュアリティ
同性愛断罪の根拠と見なされてきた聖書テキストを網羅的に取り上げ、徹底的で緻密な読み直しを試みると同時に、多様なセクシュアリティに言及しているテキストをも詳細に再検討する。
神の創造の豊かさと祝福を確認し、父権制の変革を志した渾身の力作。(裏表紙より)
昨今の「聖書によると同性愛は罪」という、一部の(しかし少なくない)クリスチャンたちの主張に対し、聖書学の切り口で「ほんとうに聖書はそう言っているのか?」を丁寧に分析しています。
すでに「キリスト教において同性愛は罪というのは動かぬ事実」と信じてきた人にとっては、「テキストを同性愛者の都合のいいように無理やり解釈しているのでは」と思われるかもしれません。しかし、聖書からそのような主張を導き出した人たちも、それぞれ聖書を「解釈」してそのような主張をしているのであって、先入観なしに聖書を100%正しく読める人は存在しないのです。
また、福音派の教会に長くいた人にとっては、著者の聖書観に違和感を感じて、読み進めるのに抵抗を感じるかもしれません。でも、いったん自分の中に築き上げられてきた教派特有の前提は脇に置いて、原語であるヘブル語・ギリシャ語のニュアンスや、それらのテキストが書かれた時代背景について詳細に書かれた記事を読み、そこから浮かび上がってくる「本来著者はこの箇所を通して何を読者に訴えているのか」という著者なりの解釈に耳を傾けてみるなら、きっと新しい発見があると思います。
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